教材『英語ディービー』の特徴について

 

『英語ディービー』とは

 

『英語ディービー』とは、日本人の英語学習のために開発された教材です。日本語を使わずに、英語と絵や図解のみで構成されています。「ディービー(DB)」はデータベースのことで、データベースを構築するように重要な語句や文法事項を網羅し、易から難へと配列した点が特徴となっています。

 

各ページの構成

 

この教材は、1ページを1つのユニットとして、30分から1時間程度を目安に学習できるようになっています。各ページとも、4つのゾーンから成り立っています。

 

(左上)

Aゾーン=本文ゾーン

これが各ユニットの本文です。

絵を見て、音声をくりかえし聞きながら覚えましょう。

 

(左下)

Bゾーン=イメージゾーン

本文に登場する語句や文法の意味を、英語での言いかえや絵・図表で表してあります。

連想クイズを解くようにして、意味を考えてみましょう。

 

(右上)

Cゾーン=反復練習ゾーン

各ユニットの要点をくりかえし使いながら身につけるゾーンです。

[1]の例にならって、声に出して言ってみましょう。初めは、先生など指導者の指導のもとに学習する必要があるかもしれません。

 

(右下)

Dゾーン=力試しゾーン

力試しの練習と要点整理のゾーンです。

 

 

Aゾーン=本文ゾーン

 

Aゾーンは、各ユニットの基本となる本文の部分を示しています。新出の語句も同時に記載しました。

●「丸暗記」は良い勉強法である

英語学習の最良の方法は、模範となる英文をたくさん丸暗記することです。実際、学生の頃に教科書を丸暗記したという英語の達人の話はよく聞きます。多くの人は、暗記といえば単語の暗記をイメージするでしょう。確かに、文章の丸暗記よりも単語の暗記のほうが覚えるべき語数が少なくて済むので効率的に思えるかもしれません。しかし、単語の暗記は、内容が無いために退屈なものになりがちです。これに対して、文章ごと丸暗記する場合は、生きた内容が含まれているのでイメージしやすく、また、文法や語法を一緒に覚えられるという利点もあります。まさに「急がば回れ」で、非効率どころかむしろ近道なのです。このような丸暗記の利点については、野口悠紀雄氏の大ベストセラー「超勉強法」でも説明されています。

●応用範囲の広い英文を暗記する

では、丸暗記の効用がわかったとして、さて何を丸暗記すればよいのでしょうか?中学や高校の教科書を覚えるのが手っ取り早そうですが、最近の多くの教科書は、残念ながらあまり丸暗記に適したものではありません。数十年前の教科書は、This is a pen.I am a boy.などリアリティがないと揶揄されましたが、むしろ応用範囲が広く丸暗記には適していたのではないかと思います。その後、コミュニケーション重視や生きた内容を重んじる風潮から、「たったこれだけの文法や語彙でここまで表現できるのか」と感心するほど教科書の内容は面白いものに変化してきました。しかし、このように内容が個性的になればなるほど、文の汎用性は薄れてしまいます。

また、学習者の知的レベルを満足させる内容になるにしたがって、同じ意味の語句でもより高度な意味合いでの使われ方となり、初めて学習する人にとってイメージのしにくいものになってしまいます。たとえば、最近の中学1年用の教科書で、withという単語の初出がWe live with nature.という例がありました。この文でwithという単語がもつ最も基本的な意味を感じ取ることは難しいでしょう。また、ある教科書ではnewという単語の初出がWhats new?という文でした。この文からnewという形容詞を応用して使っていくことは無理でしょう。

●この教材では

私は、この教材「英語ディービー」の最初の構想から10年以上かけて、より覚えやすく学びやすいよう英文の組み換えを繰り返してきました。あらゆる語法や文法を単に易から難へ配列しただけでなく、最もイメージしやすい場面で登場するように工夫しました。最近の教科書と比べて本文の内容的な楽しさは劣るかもしれませんが、その裏返しとして、暗記した英文の応用範囲は広いものになると考えています。

また、暗記の負担がなるべく小さくなるよう、全体の語数を極力少なくしました。かなり昔の話ですが、NHKの英語講座「基礎英語」のスキットを1年分全部暗記したという人が私の周りでいました。その分量よりは少なく抑えてあるので、無理な分量ではありません。ぜひ、最後のユニットまですべての暗記に挑戦してみてください。

暗記の助けとなるのが音声です。歌を覚えるのと同じで、繰り返し聴くうちに、頭で考えなくても自然に英文が口をついて出てくるようになります。このようにして耳で覚えた英文は忘れにくいものです。もう一つ大切なことは、忘れることを恐れないことです。せっかく覚えても忘れてしまうとがっかりしますが、忘れることと最初から覚えていないことは別物です。昔覚えた歌をすっかり忘れていても、一度聞いて思い出すとまたすぐに歌えるようになった経験はありませんか? 英文の暗記もこれと同じで、一度覚えれば、忘れてもまた覚え直すことはそれほど難しくありません。

 

Bゾーン=イメージゾーン

 

Bゾーンは、各ユニットで学習する語句や文型を、日本語をいっさい使わずに、英語や絵・図表を用いて説明しています。

●日本語を使わない英語学習

母国語を使わない外国語学習法は、ダイレクト・メソッドと呼ばれ、古くから世界各国で外国語学習法の正道とされてきました。いちいち日本語を介さずに英語を聴いたり読んだりする訓練をすることで、英語を理解するスピードはアップします。たとえば、犬を見たときに、頭の中で、dogという英語→「犬」という日本語→犬のイメージ、というように日本語を経由するよりは、dogという英語からすぐに犬をイメージできるほうが早いのは明らかです。英語で会話をする場合にいちいち日本語に訳していては会話のスピードに追いつけません。

しかしながら、このダイレクト・メソッドは必ずしも学習の場で普及しているとはいえません。理由の一つは、日本語を使わないと説明が難しい語句があることです。たとえば、dogならば犬の絵を使って説明できますが、goodbadなどの単語は絵で正しい意味を伝えられるとはかぎりません。英文で説明しようとすると、もっと難しい単語を使わなければならないでしょう。

ダイレクト・メソッドが困難である最大の理由は、学習者の負担が大きいことでしょう。日本語がまったくない英語の教科書で学習することは、初心者にはとてもつらいことであると想像できます。逆に、英文のすぐ横に日本語訳がついていれば、英文の意味は一目瞭然で、学習者の手っ取り早い助けとなります。しかし、いつまでも日本語の助けを借りていては、英語理解のスピードアップの訓練になりません。

●ダイレクトメソッドは「連想ゲーム」

さて、ここで発想の転換をしてみましょう。日本語が無い状態を、学習者にとっての負担と考えずに、一種のゲームと考えるのです。

たとえば、ジェスチャーゲームは相手に意思を伝えるのに言葉をいっさい使えないという不自由な状態を体験するにもかかわらず、みんなはゲームとしてその状態を楽しんでいます。そして、伝えようとする内容がわかった瞬間の喜びが大きいからこそ、楽しいゲームとして成り立つのだと思います。

●この教材では・・・

私は、この教材「英語ディービー」のBゾーン(イメージゾーン)で、日本語を使わずに本文の英文の内容すべてを伝えようとあらゆる手段を尽くしてみました。簡単に伝わるものもあれば、伝わりにくいものもあります。学習者の方々には、すぐに伝わらなくても嫌にならずに、連想クイズを解くように楽しく頭をひねっていただきたいと思います。そして、最終的に日本語無しで伝わったときに喜びを感じていただければ、それはまさに外国人とのコミュニケーションの醍醐味だと思います。

 

Cゾーン=反復練習ゾーン

 

Cゾーンは、本文で出てきた文型や語法を、語句を変えながら反復練習するパートです。

●カタコト英語で終わってはならない

コミュニケーションの手段としての英語が重視されるにつれて、学校の授業でも英会話教室でも、英語をどんどん自分で使ってみることで英語を上達させる学習法がさかんに行われています。この方法は間違いなく有効だと思いますが、やや問題のある教育が行われている場面も見受けられます。

間違った教育法の一つは、手本が無い状態で自分なりに英語を話したり書いたりする方法です。カタコトでもいいからとにかく相手に通じさせようという方法は、そのレベルが到達点ならばよいのですが、最終的に国際舞台に立てるような高いレベルを目指すのであれば、自己流の英文を作るのではなく、適切で正しい英文をまず暗記し、それらを組合せたり真似たりするのが適切であると考えられます。「英作文は英借文である」という先生がいましたが、考え方はこれと同じことです。

●シチュエーションが与えられた反復練習の有効性

間違った教育法のもう一つは、自分のことや自分の意見を英語で話したり書いたりすることに特化する方法です。力試しのテストならばこの方法も有効ですが、普段の学習をこの方法で行うと、「話すことが何もない」「書きたい意見など何もない」という人が上達しません。英語が話せない人がいても、英語の知識そのものが無いのか、それとも話す内容を持ち合わせていないだけなのかの区別がつきません。

英語学習には、「話すことが何もない」という人でもちゃんと話す内容があるように、シチュエーションが与えられる必要があるのです。

●この教材では・・・

この教材「英語ディービー」のCゾーンでは、英語を繰り返し使う練習をしますが、自由気ままに使うわけではなく、シチュエーションはすべて与えられており、使う文型や語句も指定されています。したがって、練習問題の答えは基本的に一つです。「話すことが何もない」人でも、この方法ならば、英語力そのものの上達度合を確かめることができます。

分量が不十分な場合は、指導者のもとでパターンを増やして練習してください。その場合に、各ページの学習内容から逸脱しすぎて負担が大きくならないよう配慮が必要です。

 

Dゾーン=力試しゾーン

 

Dゾーンは、力試しや知識の整理のための練習問題を行うパートです。

Listening(聞き取り)、Review(復習)などがあります。

●論理能力が備わった後の英語学習

幼児期を過ぎると、言葉のシャワーを繰り返し浴びて言葉を身につける能力が失われていく代わりに、言葉を知識として論理的に整理して身につける能力が備わってきます。小学校高学年以上の英語教育にこの能力を利用しない手はありません。

●この教材では・・・

Book1001-050)では、このパートをディクテーション(聞き取り、書き取り)の練習にあてています。聞き取りの初歩は、まず何と言われたかを正しく聞き取れたかどうかから始まると考えたからです。聞き取ったものに対していかに反応するかの力試しはその次の段階です。

Book2051-100)以降では、リスニング問題が登場します。文や対話を聴き、質問に答える練習です。

Book3101-150)からは、文法や語句を知識として整理する問題が加わります。